雲ノ平・鷲羽岳・黒部五郎岳(2022-10-11〜14)

最終更新日

勤めている会社では、5年に1度リフレッシュ休暇という5連休が与えられる(ありがたいことに)。それを利用して、平日の北アルプスを2泊3日で歩いた。折立から入山して、雲ノ平、鷲羽岳、黒部五郎岳を経て、折立へ下山するラウンド縦走。行き帰りのバイク(Ninja 400)移動で前後1日ずつを使い、4泊5日の旅になった。

メンバー

崎間

行程

  • 2022-10-11(火)晴ときどき雨
    07:50 加古川市
    13:30 尼御前SA
    15:00 呉羽PA
    15:30 富山IC
    17:00 折立キャンプ場
  • 2022-10-12(水)曇ときどき晴
    04:00 起床
    04:50 出発
    07:25 五光岩ベンチ
    08:10 太郎平小屋
    10:10 薬師沢小屋
    13:00 雲ノ平山荘
    13:30 雲ノ平テン場
  • 2022-10-13(木)曇ときどき晴
    05:00 起床
    06:10 出発
    07:15 祖父岳
    08:05 ワリモ北分岐
    08:50 鷲羽岳
    09:55 三俣山荘
    11:10 三俣蓮華岳
    12:30 黒部五郎小舎テン場
  • 2022-10-14(金)晴
    04:00 起床
    04:50 出発
    06:50 黒部五郎岳
    09:15 赤木岳
    11:00 太郎山
    11:15 太郎平小屋
    11:55 五光岩ベンチ
    14:15 折立

詳細

1日目(2022-10-11):自宅→折立へバイク移動

シートバッグの上に50Lのザックを括り付け、不安と期待が入り交じる気持ちで8時前に自宅を出発する。通勤で混み合う市街地を抜け、山陽道、舞鶴若狭道を経て北陸道を進む。ところが、福井方面に行くつもりが何故か米原方面へと真逆へ進んでいるではないか。気付いたのは、PAでの休憩時にスマホを眺めてからだった。せめてバイクにスマホホルダーを付けて、走りながら位置確認できるようにしておけばよかった。最寄りのICで降りてすぐにUターンし逆方向に乗り直す。

富山県の呉羽PAで早めの夕食。富山ICで北陸道を降り、有峰湖を目指す。標識を頼りに進めばいいと思っていたものの、けっこう入り組んでいて道がよく分からず心細くなり、何度か停車してスマホで現在地を確認していたら時間がかかってしまう。林道ゲートになんとか到着し、受付の人に料金を支払うと「やっと雨がやんだねえ」と声を掛けられて嬉しくなる。昨日までは全国的に雨が続いていた。有峰湖への有料道路は、なんとなく、ヨセミテ渓谷内の道に似ていた。

日が落ちると同時くらいに有峰湖キャンプ場で設営。他にテントが1張。食事は道中で済ませたので、お湯だけ沸かしてカフェオレを飲む(今回の山行もお酒を持ってこなかった)。荷物の分類や読書をして、21時就寝。

▲有峰湖展望台
▲人の少ない有峰湖キャンプ場

2日目(2022-10-12):折立→雲ノ平テン場

寒さと興奮が相まって余り熟睡できないままに4時起床。カップうどんの中身だけあらかじめ取り出していたものをタッパーに入れてお湯をかけて朝食とする。お湯を入れ過ぎて味が薄い。ヘッデンの明かりを頼りに、折立登山口から山を登る。久々のテント泊縦走なので体力が持つか心配。途中、単独の方に追い抜かれる。

1時間程すると辺りが明るくなり、ヘッデンを消す。高山特有の、香ばしいような懐かしいような匂いが漂う。ナナカマドが赤い実を付けている。暑くも寒くもないベストな環境に支えられて気分良く高度を稼ぐ。トレーニング不足の体もなんとか持ちそうだ。五光岩ベンチを過ぎると視界が広がり、気分はもう稜線。太郎平小屋に向けて幸せな歩みを進める。

8時過ぎ、太郎平小屋着。ベンチに腰かけて大休止。行動食の塩せんべいをバリバリと食べる。人心地付け、雲ノ平に向けてまずは薬師沢へと高度を下げる。けっこう下るので、後の登り返しを思うともったいなくも感じる。2時間ほどかけて到着した薬師沢小屋から黒部川の上流を眺め、赤木沢へ行くにはここから遡行するのかと思う。

目指す雲ノ平へは、吊り橋を渡り、ゴーロ帯をひたすら直上する。薬師沢小屋から雲ノ平木道末端までの標高差約500m。この部分が全行程中で最もしんどかった。苔むした大きな岩に足をかけ、エイヤと太ももに力を込めて体を上げる。延々とその繰り返し。学生時代に南アルプス高山裏避難小屋オヤジさんに「ええ太ももしとるのお」とお褒めに預かった僕の自慢の太ももは、怠惰ゆえに1年間で5kgも増えた自重を持ち上げるのに悲鳴を上げている。

やっとのことで到着した雲ノ平の木道を歩く。かつての日本最後の秘境は、いささか整備され過ぎているか。自宅の小さな庭にDIYでウッドフェンスを製作するだけで大変苦労している僕には、この木道を製作した方々の労力は想像もつかない。

13時、小屋でテントの受付をして、13時半にテン場着(なんでこんなに離れてるんだ)。1日目の行程を終えてから淹れたコーヒーは、今まで飲んだ中で最も美味しかった気がした。

▲登山開始
▲太郎平へと続く稜線
▲太郎平小屋のベンチで雲ノ平方面を見ながら休憩
▲薬師沢小屋前の吊り橋。高度感あり
▲うんざりするゴーロ帯の急登(薬師沢小屋~雲ノ平間)
▲雲ノ平と水晶岳
▲雲ノ平のテン場から夕日と黒部五郎岳

3日目(2022-10-13):雲ノ平→黒部五郎小舎テン場

今日は短めの行程なのでゆっくりと朝を過ごしていたら、辺りのテントはほとんど撤収されている。なんとなく出遅た感じを受けながら6時過ぎに出発。スイス庭園なる場所に立ち寄ると、池塘の表面がうっすら凍っている。もうすぐ冬だ。

約25年前、新穂高温泉から双六岳、黒部五郎岳、薬師岳、五色ヶ原、立山へと縦走する計画で入山した。ワンダーフォーゲル部1年生のときの夏合宿だった。いろいろあって最初の双六岳までで合宿は中断となった。そのときに見上げた鷲羽岳に登りたかった記憶だけが鮮明に残っている。今、その鷲羽岳へと登っている。雲ノ平から祖父岳、ワリモ岳と順に登り、最後のひと頑張りで鷲羽岳の山頂に着く。展望を遮るものは何もない。ついに登れた。

長年の目標を達成できた感激を山頂に残し、三俣方面へ下る。鷲羽池越しに見える槍ヶ岳がまたいい。三俣山荘前で給水し、日向ぼっこしつつ休んでいたら、小屋から「ねえなんで結婚したん?プロポーズされたん?」という子どもの声とそれに答える女性の会話が聞こえて、とてもほのぼのした。三俣山荘と蝶ヶ岳ヒュッテはテント泊の登山者にもやさしい印象。

三俣蓮華岳に登り、ここでも展望を欲しいままに堪能する。1時間ちょっと下ると、黒部五郎小舎に到着。既に営業は終了しており(公式HPによると10月10日まで)、従業員らしき方が小屋閉め作業をされていた。テン場の使用許可を得て、小屋から笠ヶ岳が見える方に少し歩いた所にあるテン場へ行く。12時半に到着した時には貸切状態だったけれど、徐々に増えて、最終的に4張になった。

夕食は味付けアルファ米とスープ。満月が明るい夜。今日も読書が進む。22時くらいまで小屋閉め作業に伴うインパクトドライバの音が鳴り響いており、山小屋の仕事も大変だなと思う。

▲早朝の雲ノ平スイス庭園
▲ワリモ岳側から鷲羽岳への登り
▲鷲羽池、硫黄尾根、槍ヶ岳。絵になる風景
▲鷲羽岳と三俣山荘
▲三俣蓮華岳山頂。奥に槍ガ岳と穂高連峰
▲印象的な道標と黒部五郎岳
▲笠ヶ岳がよく見える黒部五郎小舎テン場

4日目(2022-10-14):黒部五郎小舎テン場→折立

ダウンベストを着たおかげか、比較的よく眠れた。4時起床。早いものでもう今日は下山だ。テントの内外が凍って袋に入らないので、適当に丸めてザックに押し込む。5時前出発。

カール経由で黒部五郎岳の頂を目指す。途中に何箇所か流水あり。水はまだ3リットルくらいあるので補給せず。徐々に夜が白みヘッデンの明りが薄れる。この時間が好きだ。槍ヶ岳方面から朝日が登り、モルゲンロートの黒部五郎岳が眼前にそびえる。テン場から2時間程で山頂に到着。雲一つない快晴。

太郎平へつづく稜線は、ワンダーフォーゲル部1年生のときに行くはずだったルートの一部だった。あの時、あのパーティーで登っていたら、いったいどんな会話をして、どんな気持ちだっただろうと空想する。今よりは遥かに体力があったので全然疲れなかっただろうか。それとも、山の経験を積んだ今のほうが、なんとなく誤魔化しが効くようになっているだろうか。

この稜線は本当に気持ちがいい。つい寝転びたくなるような平地がそこここにある。高山植物が元気に生きている。鳥の群れが飛び交っている。この生命力あふれる高地は、どんなときでも(例えば僕が仕事でヘマして怒られているときでも)、いつも変わらずこの場所にあるのだ。そう思うだけで勇気づけられる。

太郎平を経て、14時半に折立へ下山。駐車場でバイクに乗せるため荷物を整理する合間に、テントを広げて少し乾かす。テントにはまだ霜が残っている。

この日は富山の旅館で1泊し、翌朝、能登半島を少し観光して、兵庫県に帰った。

▲夜が白む
▲モルゲンロートの黒部五郎岳
▲朝日がカールを照らす。遠くに槍と大キレット
▲黒部五郎岳の肩から太郎平への稜線
▲心地よい台地

感想

トレーニング不足だったのでまともに歩けるか心配だった。バイクでの400kmを超える移動も心配だった。10月の北アルプスも初めてだったのでどんな服装や装備を準備すればいいかも心配だった。心配ばかりしていたけれど、結果的には、毎日天候に恵まれ、雪もなく、雨もなく、危険箇所もない登山道を快適に歩けた。念のために持って行った冬用アウターやダウンも使わずに済んだ。

学生時代に山のいろはを教えてくれたワンダーフォーゲル部の輩方や友人や後輩のことをときどき思い出しながら、じっくりと稜線を踏みしめる、気持ちのよい日々だった。いくつもの感激があった。

備忘録

  • レトルトパックの米は湯煎に時間がかかり、中途半端に温めるとボソボソして美味しくなかった。お湯で戻すタイプのアルファ米が一番だ。
  • バイク移動時、シールドの汚れを拭き取るためウェットティッシュが役立った。そのままだとムラが残って見づらいので、メガネ拭きの大きい版みたいなのが欲しかった。
  • バイク用グローブは夏用と冬用の両方を持って行ったので、気温の変化に対応できた。