小川山 クレイジージャム (2017-10-08〜09)

最終更新日

小川山に訪れた。子どもが産まれて以来、家族3人だけで初めての訪問。散歩したり、少しボルダーを触ったり、近くの公園で過ごしたり、ゆっくりと紅葉の廻り目平を満喫した。夜は少し冷え込んだが、集めた枯れ木で熾したささやかな焚火は、ぼくらの体を暖めてくれた。特に娘は「あったかいね、とーちゃん!」とご満悦で、しきりに小枝を火中へ投入していた。

褒められたものではないけど、10/9の早朝、娘が眠っている隙に「クレイジージャム 5.10d」を登りに行った。娘を背負子に乗せ、妻と2人で岩場へ向かう。6時前に親指岩に着く。取付き右手の安定した高台にマットを敷いて娘を寝かせる。彼女の睡眠時間を考慮するとチャンスは1度切り。アップしている時間は無い。娘よ、頼むから目を覚まさないでおくれ。

そんな思いも虚しく、出だしのレイバック部分を抜けてゼーゼー言っていると娘がシュラフから顔を出した。「おしっこー!」。スルーしてぼくは登る。ハンド部分を抜けていよいよ鬼門のワイドパート。「かーちゃん!漏れちゃうよ!」。魂の叫びがこだまする。あぁ、これまでか。

だが諦めるのはまだ早い。ここはレストポイントだ。バチ効きのキャメ3番にセルフを取る。しかしテンションはかけずにレスト姿勢で耐え、ビレイヤーの妻に娘の対応をしてもらう。タブレットで動画を観せ、おやつも供給。これでしばらく持つだろう。

妻が戻って来たと同時にクライミング続行。レスト中フットジャムしっぱなしで痺れてきた左足をシェイクしつつ登る。以前はムーブが全く分からなかったワイドパート、今はグイグイと体が上がる。三倉岳でワイド慣れできたおかげだろうか。プロテクションのセット位置に気を付け(肩より上にセットすると動けなくなる)、無心でズリズリと上がる。

抜け口のガバを掴むと辺りが一気に明るくなった。深呼吸し、ジャミングし続けて強張った左手が開けるようになるまでレストする。怖いフィンガートラバースとマントリングをこなして親指岩の岩頭に立つ。妻と娘から「おめでとー」の声が届く。稜線から登って来た朝日が岩頭のシワを際立せ、まるで巨大な生き物の上に立っているみたいだ。心に刻まれた数十分となった。

クレイジージャム 5.10d、ついに完登!

初版:2017-10-10、最終更新:2017-10-11