選択と集中

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今朝、秋田犬のムースと散歩していると、冷たい強風がとても寒かった。思えば、昨年までは、この時期に毎年雪山を登っていた。今年はまだ一度も行っていない。なぜなら、夏頃からずっと、自分のパラメーターを仕事に全振りしているからだ。

これまで僕は、登山やクライミングに多くの時間を割り振っていた。今は、仕事で成果が出てくるのが楽しいので、使える時間と体力のほとんどを仕事関係に費やしている。誰かに指示されるタイプの仕事ではなく、自分で構想を温め提案したタイプの仕事だ。これまでばらばらで手間がかかっていた概念を、コンピューターの力を使って束ねるような内容なので、趣味の延長線と言えなくもない。

西村佳哲 著「自分の仕事をつくる」という文庫本の232ページ目に「頼まれもしないのにする仕事」という節がある。

 単純に比べると、イタリアのデザイナーは個人に立脚したところから仕事を展開し、日本のデザイナーは企業を起点に仕事を展開してきた。別の言い方をすると、前者は「頼まれもしない」のに自分の仕事を考え・提案し、後者は他者から依頼されることで仕事をはじめる。
 しかしそんな日本でも、自分自身から仕事を立ち上げる人たちが、目立って増えてきたと思う。

頼まれもしない仕事とは、言い換えれば、まだ世の中に気づかれていないクリエイティブな仕事だ。僕にデザインはできないけれど、どんな分野にも、まだ見ぬクリエイティブな仕事はある。今の職場に入って20年が経ち、無関係に見えた課題であっても、抽象化すれば共通の概念があるのだと、やっと気づけてきたように思う。課題の細部を把握する「虫の目」、全体を俯瞰する「鳥の目」、課題と課題の流れを掴む「魚の目」という3つの視点が、僕なりに身に付きつつあるように思う。

山深いエリアでのクライミングでは、最も難しい核心部を乗り越えるため細部に集中し(虫の目)、入山から下山までの全体行程を俯瞰して装備や時間配分を考え(鳥の目)、天候や体調に応じた流れを見極めて判断する(魚の目)。僕はそのようなことを、とても大げさに言えば、命がけの遊びのなかで行ってきた。この経験が役立っていると感じる。登山やクライミングに費やした時間は、決して無駄ではなかった。

年齢を重ね、長時間座っていると腰や肩が痛くなり、老眼が進んで細かい文字を読むのが辛くなってきた。何かに夢中になり、集中できる時間は有限であることを、ひしひしと感じる。元気なうちに、後世に役立つトレースを残したい。