松本市
僕にとって、長野県松本市は非常にノスタルジーを感じる土地だ。大学生時代に所属していたワンダーフォーゲル部という怪しい部活では、毎年夏になると夏合宿に出かけていた(夏になると春合宿に出かけていたら、もっと怪しい部活だったと思う)。
夏合宿では大抵、日本アルプスの山々を1週間くらい縦走していた。何パーティーかに分かれて山に入るので、それぞれの山行が終わった後の待ち合わせ場所として選ばれていたのが松本市だった。松本市には、登山シーズンになると多くの登山客が訪れている。そのため、駅前や公園で登山者が野宿していてもわりとOKな雰囲気があって居心地が良かった。懐の深い土地なのだ。
我らがワンダーフォーゲル部は、県(あがた)の森公園という、松本駅から徒歩約20分の場所を、毎年の集合地点と決めていた。天候やら体調やらの関係で、下山するタイミングは、それぞれのパーティーによって前後するので、早く下山したパーティーは後から下りてくるパーティーを待つために何日も公園に滞在することになる。
僕が大学1年生のときは、県の森公園に1週間も寝泊りした。夜になったら公園の地べたにキャンプマットを敷き、そのまま寝る。朝になったらまぶしい日差しと蝉の鳴き声で目覚め、きらきら輝く空気と緑がまぶしい芝生を尻目に近所の浮浪者達と東屋の椅子を巡って争ったりした。ああ、ノスタルジーである。あの日々はもう帰ってこないが、似たような思い出はこれからも見つけられるだろう。でもいつかは、松本市に住んでみたいな、とも思う。