前穂北尾根(2010-07-17〜19)

最終更新日

メンバー

崎間、I東、kinaco

2010-07-16(金)[晴れ]

明石 21:40→翌日4:00 沢渡

前夜21:30頃に車で明石を出発。途中でメンバーと合流し、沢渡の岩見平駐車場に4:00頃着。ひんやりとした空気が心地良い。三人それぞれ、車の外や中で1時間ほど仮眠。

2010-07-17(土)[晴れときどき雨]

上高地 6:20―(57分)→7:17 明神館 7:30―(47分)→8:17 徳沢 8:30―(61分)→9:31 横尾 10:05―(69分)→11:14 本谷橋 11:45―(54分)→12:39 2000m付近 13:40―(95分)→15:15 涸沢; 歩行時間計376分(6.3時間)

5:00起床。kinacoさんが用意してくれたいなり寿司を食べながら共同装備を振り分ける。5:40頃、タクシーで上高地へ移動。料金は4,000円の定額。ちなみにバスだと一人1,200円なので、三人ならタクシーがちょっと割高だ。30分弱で上高地のバスターミナルに到着。カラフルな服やザックを身に着けている若い女性が視界に入る。これが本場の山ガールかと感心しつつ、記念に遠くからカメラに収める(盗撮)。そんなぼくの隣では、I東さんが鳩を追いかけて遊んでいた。

ロープやガチャのせいでいつもの夏山よりも重いザックに戸惑いながら涸沢を目指す。日差しが強く暑い。少し歩くだけで全身から汗が吹き出してくる。ふとメンバーを見ると、汗が吹き出しているのはぼくだけだった。明神、徳沢、横尾と休憩を取りながら進む。周りの登山者と一進一退を繰返し、スゴロクのコマになった気分。本谷橋で休憩したときの水の冷たさが忘れられない。本谷橋から1時間ほど登った辺りで再度休憩。この辺りで眠気がピークになる。休憩中に雷が鳴り、雨が降り出した。一気に身体が冷える。雨具を着て再び登ると、涸沢から標高100m下あたりから雪渓となる。15:15に涸沢ヒュッテ着。

テン場を探すが雪のない部分はすでにテントで埋め尽くされており、雪の上にテントを設営。ついでにお酒も雪に埋めて冷やしておく。夕食のトマトスープとワインを楽しむ。既に雨は止み、雷雲は去って青空テントの外は青空と雪渓が眩しい。トポで明日のルートの予習をしつつ、18:00就寝。

▲涸沢のテン場から望む蝶ヶ岳

2010-07-18(日)[晴れ]

涸沢 5:10―(73分)→6:23 五・六のコル 6:40―(43分)→ 7:23 五峰山頂 7:30―(61分)→8:31 三・四のコル 11:30―(220分)→15:10 前穂高岳 15:35―(76分)→16:51 奥穂手前 17:00―(55分)→17:55 穂高岳山荘 18:05―(98分)→19:43 涸沢; 歩行時間計626分(10.4時間)

3:00起床。朝食はスパゲティ。本日はサブザック装備で北尾根を登り、奥穂経由で涸沢に戻る予定。kinacoさんが昨日の登りでヒザを痛めており、テーピングするもあまり改善されない様子。数十mの距離でも痛んで満足に歩けないため、本人から北尾根は断念して待機したいと申し入れがあった。悩んだが、kinacoさんには下山に備えて一日休養してもらい、北尾根へはI東さんとぼくの二人でアタックすることとした。今回のメイン行程に参加できなかったkinacoさんは、さぞかし悔しかったことと思う。

▲涸沢のテントから五・六のコルへ出発

クライミング装備を整え、5:10にテント発。アイゼンを装着し、五・六のコルへ向け雪渓を詰める。コルの10m手前まで雪渓が残っていた。テントからコルまで約70分。休憩し、ハーネスだけ装着して、先行パーティーの起こす落石音がこだまする五峰へ向かう。五峰の登りは、少々道が狭くて急な登山道といった感じで、普通に歩ける。約40分で山頂着。一息いれ、続く四峰へ向かう。

▲四・五のコルから見た四峰上部

浮石が多くルートファインディングが難しい、という事前情報どおり、四峰の登りでは先行パーティーが「ラク!」を連呼している。こちらも落石を起こさないよう慎重に登るが、ぼくは一度大きな石をI東さんの近くに落としてしまった。幸い誰にも当ることは無かったが、もし直撃していたらと思うとゾっとする。ルートファインディングに関しては、取り付いている人が目印になったため苦労しなかった。凹角のところで先行パーティーロープがを出していたため、そこは涸沢側に巻いて、確保なしで四峰山頂へ出た。期せずして2パーティーほど追い抜くことができた。

三・四のコルへ8:30頃到着。この時点で既に5パーティー、15人ほどが順番待ちをしている。1時間くらいで取付けるかなあと希望をもちつつ休憩する。直射日光がジリジリ照りつけるコルで行列を待つものの、待てども待てども順番は回ってこない。持ってきたタバコが無くなりそうだ。昨日の雨で湿ったカッパや登山靴を乾かし、もう何も乾かすものはないぞとなったころ、ようやく出発できた。3時間待ちであった。

▲三・四のコル付近から見た三峰

10.2mm×50mのシングルロープを結び、クライミングシューズを履き、1P目を登攀開始。神戸山岳会に入会して約1年、アルパインクライミングデビューを果たすことができた喜びを感じつつ登る。晴れてくれてありがとう。感動もつかの間、ランニングビレイを2点取ったあたりで先行の4人パーティーに追い着いてしまった。どうやら、ずっと先の方まで渋滞しているみたいだ。先行パーティーを奥又白側に避けた所に支点があった。さらに奥又白側へ登れそうなラインと残置ピトンを発見。そこを越えて1P目を終了。テラスでしばし順番を待つ。

2P目は、チョックストンでは無い方のルート(簡単な方)を選択。しっかりとした岩場を順調に登っていたのだが、ぼくのランニングビレイの取り方が下手だったので、2P目終了点まであと少しの所でロープが流れずにっちもさっちも行かなくなってしまった。仕方なくピッチを切り(残置支点は豊富だ)、セカンドのI東さんと合流し、再び数メートル分だけロープを伸ばして2P目を終了。広いテラスでまたまた順番待ち。

3P目は快適な凹角だ。特に難しいところもなく順調に登る。いつの間にか青空はガスで覆われ、辺りは灰色になっていた。

4P目は先行パーティーの様子を伺い、難しい所が全くなさそうだったのでコンテで抜ける。

5P目もコンテで行けそうだったが、不安だったのでスタカットとする。この辺りになると残置支点は少なくなり、自分で支点を作らない限りは結構長い距離ランナウトしてしまう。

6P目はコンテで懸垂下降支点まで移動。岩にスリングで固定された残置のカラビナ(溶接タイプ)にロープをセットし、5mほど懸垂下降。ロープを回収し、稜線を少し歩いて15:35に前穂高岳山頂へ到着した。I東さんと堅く握手し、お互いの無事を喜ぶ。ハーネスやギアをザックに収めて、残りのルートの長さにやや憂鬱になりながら、山頂を後にした。

日没までには涸沢まで戻りたいなあと会話しつつ、休憩もそこそこに吊尾根、奥穂高岳、ザイテングラートのルートを黙々と歩く。ザイテングラートの後半はテン場まで雪渓が続く。アイゼンを装着し雪渓を下っている途中で日没を過ぎた。ヘッドランプの灯りを頼りに涸沢に到着したときには19:30を回っていた。テントに着くと帰りの遅いぼくらを心配していたkinacoさんと合流した。ずいぶんと心配をかけてしまった。ぼくらの後にも、北尾根を登ったパーティーのヘッドランプがザイテングラートを下っているのが見えた。

余裕があれば翌日は北穂をピストンして上高地に下山するつもりだったが、余裕があるとは言えなかったので下山のみに決定。昨日残ったスパゲティとラーメンの夕食を摂り、ぐっすりと眠る。

2010-07-19(月)[晴れ]

涸沢 8:00―(67分)→9:07 本谷橋 9:25―(51分)→10:16 横尾 11:00―(54分)→11:54 徳沢 12:29―(49分)→13:18 明神館 13:30―(58分)→14:28 上高地; 歩行時間計279分(4.7時間)

本日は下山のみのため、朝6:00にゆっくりと起床。テントなど乾かしながら涸沢でのんびりする。少々なごりおしさを感じながら8:00出発。2日前に登った道を降る。途中、昨日北尾根で会ったパーティーと会話すると、昨日の涸沢着が22:00を過ぎた方もいたようだ。

要所々々で必要以上に休憩をとり、徳沢では濃厚なソフトクリームも摂取し、上高地には14:30頃到着。タクシーで沢渡へ移動し、運転手さんに教えてもらった上高地ホテル(駐車場から松本方面に車で1分)で温泉につかった。葉っぱや湯ノ花が沢山浮いた、落ち着く感じの岩風呂だった。高山で自然薯のとろろ定食を食べ、3連休最終日で渋滞した高速道路に乗り、帰神。

NOTES:

  • 涸沢の雪渓ではアイゼンがかなり役立った。当初、アイゼンを持っていくことは考えておらず、集会でにアドバイスを頂いたおかげである。感謝。
  • 多少の覚悟はしていたものの、三峰取付きでの順番待ちは予想を大きく上回るもの(3時間)だった。連休中で人の多いことは予想されたので、夜明け前から取り付きに向かえば良かったと反省。
  • 他パーティーの装備を見ると、ダブルロープとシングルロープの比は1:2程だった。また、クライミングシューズと登山靴の比は1:1程度。大学山岳部らしき若い方々、ぼくらと同年代(30代前半)、シニアの方々と、年代も様々だった。
  • スリング1本とカラビナ2枚でつくるアルパインヌンチャクが長さを変えられて便利。アルパイン関連の教本には良く記載されていることだが、実際に経験してみてやっと納得した。一方、フリー用のヌンチャクはあまり本数は要らなく、2~3本で十分だった。