霞沢岳 (2019-08-14〜15)

最終更新日

霞沢岳へと続く稜線

北アルプスの玄関である上高地からすぐ近くにありながら、なかなか行こうと思わなかった霞沢岳へ登ってみた。もともとは、北鎌尾根へ行くつもりだったけれど、台風10号の接近で稜線は荒れそうだったので、1泊で行けて樹林帯メインという条件にマッチした霞沢岳に変更した次第。静かな山を歩いた癒やしの山行となった。

メンバー

単独

行程

  • 2019-08-14(水)
    05:15 上高地バスターミナル
    06:00 明神館
    06:05 白沢出合
    07:45 徳本峠・霞沢岳分岐
    08:45 ジャンクションピーク
    10:50 K1ピーク
    11:30/12:00 霞沢岳
    12:30 K1ピーク
    14:15 ジャンクションピーク
    15:00 徳本小屋
  • 2019-08-15(木)
    04:00 起床
    05:00 出発
    05:25 ちから水
    06:35 岩魚留小屋
    08:15/08:35 二俣
    09:55 島々ゲート
    10:35/11:35 竜島温泉 せせらぎの湯
    12:25/12:48 新島々
    19:30頃 自宅着

詳細

1日目(2019-08-14:上高地→霞沢岳→徳本峠)

前夜21:39新大阪発のさわやか信州号に乗り、5時過ぎに上高地バスセンターに到着する。台風10号の影響でバスはキャンセルが相次いだようで、乗車率は40%くらい。乗車時間の7割くらいは眠れた。トイレに寄ると、見張り?のおじさんが入口に常駐していて「チップ制でーす。ご協力よろしくお願いしまーす」とチップをよろしくお願いしておられた。大変な仕事だ。チップを払い、登山届を提出し、テントが所狭しと張られている小梨平を抜け、明神館を目指す。

梓川から穂高岳連峰。このときは快晴でした

明神館から5分もかからないところに、徳本(とくごう)峠への分岐がある。これまでは徳沢・横尾方面へ直進していたけれど、今日はこの分岐を右折する。はじめての道はわくわくする。ついでに言うと、今回は靴、ザック、サコッシュもほぼ新品。上高地まで1人で夜行バス入りするのも10年ぶりだし、新鮮な気持ちで歩く。沢沿いの快適な道を3時間弱歩くと、徳本峠・霞沢岳の分岐。テント泊装備1式持ったまま、霞沢岳へと向かう。

30Lのザックにテント泊装備1式。右の白いのは妻が造ってくれた特製サコッシュ

アップダウンの多い尾根道を、霞沢岳山頂を目指して進む。晴れれば展望が良いそうだけれど、あたりはガスに巻かれて展望ゼロ。台風の影響か、徐々に風が強さを増す。

森の匂いが漂う山を1人で歩いていると、たゆたう意識のなかで、ふと、昔のことを思い出す。これまで歩いた山の1シーンだったり、10年前に他界した父の声だったり、娘が生まれてきた瞬間だったり。山に入って誰とも会わずに過ごしていると、自分の心の奥深くを覗けるような気がする。

ときおり、ガスが切れて霞沢岳が姿を表しました

睡眠不足と展望のなさが相まって、霞沢岳のピストンで思ったよりも消耗し、15時にやっと徳本峠小屋に到着。受付をして、ついでに缶ビールも買って、テントを設営する。夏山のテント泊って、とても楽だ。整地しなくていいし、水づくりしなくていいし、結露もない。でも、体が汗でものすごくベタベタするのが辛い。昨日、山に行く前だからと自分に言い訳して、昨日のお昼にチャーシュー麺を食べたからだろうか。

徳本峠のテン場。テントは僕含めて計4張でした

行動食の残りを食べながらビールを飲むと満足してしまい、眠りにつく。夜中、ときおり雨が強くテントを叩く。

2日目(2019-08-15:徳本峠→新島々)

携帯のアラームで4時に目を覚ます。軽量化のためシュラフを持ってこなかったので寒さが不安だったものの、フリース+シュラフカバーで丁度良く、快眠できた。起きると雨は止んでいた。簡単な朝食を摂り、テントを撤収し、薄明かりのなかを島々へ向かって出発する。

ガスに巻かれた森を歩く

現在、上高地へは中の湯から釜トンネルを経て大正池側からアクセスするのが主流だけれど、北アルプス開山の黎明期には、島々から徳本峠を越えて上高地へ行くのが最も容易な道だったとのこと。その道を僕は下る。100年前の往来を想像しながら。

「ちから水」という水場までは、つづら折れの急な下りで、登ってくるとかなりしんどそうだ。笹やフキが夜露たっぷりに茂っていて、防水仕様でない僕の靴はあっという間に靴下までびしょ濡れになってしまう。

水場を過ぎると、沢沿いの緩やかな下りが続き、ビチョビチョの靴だけれど心地よく森の中を歩く。すたすたと一定の歩調で、くだらないことを頭で考えながら、考えた端から忘れながら、無心に近い感覚で、長い道のりをただただ歩く。下るにつれて沢の水量は増す。水と森の風景に癒やされる。

沢と並行して続く道
小さな釜
せせらぎ

二俣から先は未舗装の林道となり、楽しみは消えて、目的地へ行くための義務的な移動となる。島々の集落から最寄りの日帰り湯「竜島温泉 せせらぎの湯」まで30分歩き、汗を流してリフレッシュ。さらに新島々まで1時間弱歩き、電車を乗り継いで家に帰る。

松本から名古屋へ向かう特急しなので一服

感想

登山というよりも、1人旅というような趣の2日間だった。台風接近のおかげで、直前になって行き先変更したものの、霞沢岳と徳本峠のセットはとても良かった。これまで僕は、クライミングという狭い領域にこだわり過ぎて、自分の活動領域を狭めてしまっていた気がする。ときには、困難さを求めずに、旅をするのも悪くない。

複数人でアルプス方面へ行くときは車移動が多く、徹夜で運転したりとセカセカしていた。前夜発の夜行バスで上高地入りして、2日間山に入るというのは、なかなか時間に余裕があって良かった。これなら普通の土日でもけっこう遊べそうだ。松本から特急列車に乗って、ビールを飲みながら車窓を眺めるのもまた楽しかった。