【読書感想文】シングルタスク
僕の仕事はデスクワークがメインだ。気付けばいくつものフォルダが開かれ、PDFリーダやWebブラウザには多くのタブがひしめきあい、様々な資料が表示されっぱなしになっている。Excelでデータを整理している途中、何か調べようと思ってWebブラウザに画面を切り替えたものの、開かれっぱなしのタブの内容に目が行ってしまい、気を取られているうちにそもそも何を調べようとしていたのかを忘れてしまう。要アクション事項は遅々として進まない。
仕事はおろか、プライベートでもそんな状況に陥りがちで、さすがにちょっとどうかと思うようになってきた。現状打破のため、新型コロナ在宅期間中にKindleで購入して読んだ書籍が「SINGLE TASK 一点集中」だ。 似たような本はいくつもあるけれど、この本はメッセージが明快で読みやすく、書いてあることを実行したいと思わせてくれるという点において、とても優れていると感じた。
私たちには過去を変えることも、未来を予言することも、他人を意のままに動かすこともできない。ただ、いまという瞬間、シングルタスクに集中し、自分の人生、仕事、周囲で渦巻いている世界を、よりよい方向に向けることだけが可能なのだ。
いまこの瞬間のタスクに集中せよ、そうすれば自分や周囲をよりよい方向に向けることができる、というメッセージを伝えるこの文がとても印象的に残っている。
人間がマルチタスクをこなすことはそもそも無理で、複数内容を同時進行しようとしても、実際にはシングルタスクを細切れにして頻繁に切替えて効率を落としているか、どっちつかずでタスク自体が成立していない、という状態なのだそうだ。だからマルチタスクでは効率が落ちるし、下手したら切替えだけで終わってまったく前に進まない可能性だってある。また、著者は
シングルタスクとは、たんなる行為を指すわけではない。自制心を発達させることでもある。
と言う。いま行っているタスクを終える前に、別のタスクが気になったとしても、ちょっと辛抱して今のタスクから逸れずに集中する。考えるまでもなく当然のことだ。手掛けている作業に集中しなければいつまで経っても終わるはずはない。シングルタスクを貫くには忍耐力が必要なのだ。そんな当たり前のことが僕にはずっと前からできていなかった。
僕はこの本を読んで気持ちを入替え、一つのタスクに集中して取り組むようリハビリ中だ。手始めに、このブログの記事である「クライミング金属材料」を全3回に分けて書き切ることに集中した(こんな記事でも、それなりに労力が必要だったんです)。
半年前から、内容の構想はあったし、資料も少しずつ集めていたのだけれど、ブログの記事として公開するからにはきちんとしたものを、という心理的ハードルが高くてなかなか作業が進んでいなかったので、気合を入れてシングルタスクで取組むための絶好の課題になった。
乏しい自制心をかき集めてシングルタスクとして文書作成に取組んでいれば、多少なりとも、没頭した状態に入れる。そうすると、これまで漠然と考えてもまとまらなかった事柄を、なんとか手持ちのデータと知識でやりくりして、出口を見つけられるような、いい経験だった。
注意力散漫な僕には、一朝一夕にはシングルタスクが定着しなさそうだけれど、とにかく「SINGLE TASK 一点集中」は読んでよかったと思う。