阿弥陀岳南稜 (2012-02-04)

最終更新日

メンバー

崎間(単独)

概要

前夜発日帰りで阿弥陀南稜を単独で登った。南稜に登るのは今回が2回目。厳しい天候だった。

  • 2012-02-04(土)[晴れのち吹雪]
    船山十字路 6:10/6:30 → 広河原橋 7:00 → 立場山 9:25/9:30 → 無名峰 10:25/10:30 → P3ルンゼ下 11:30 → 阿弥陀岳 12:10 → (御小屋尾根) → 美濃戸口 15:15/15:40  (タクシー) → 船山十字路 15:50

詳細

前夜2/3 22:30に自宅(東京都)を出発し、中央道の八ヶ岳PAに2/4 0:30着。4時間程仮眠した後に身支度を整えて出発。船山十字路のゲート前に車を停めたのが6:10。一番乗り。

広河原へ向かって林道を登る。30分弱で広河原橋。「橋を過ぎてしばらくすると阿弥陀南稜の標識がある」というネット上の情報を信じてしばらく歩くものの、それらしき標識なし。橋から沢沿いのトレースを20分以上登ってようやく、なんかおかしいなと思い、地形図を確認する。道を間違えたようだ。引き返し、立場山の尾根に向かうトレースを見つけた。急登を越えて尾根に出る。天気は良好。今日は良い日になりそうだ、と思う。

立場山の尾根

立場山まで約2時間の単調な登り。標高を上げていくと日差しがなくなり、風が徐々に強まり、身体が冷えてくる。ザックに吊るした温度計は氷点下20℃を指している。オーバーグローブを付ける。途中、2人組1パーティーを追い抜き、単独の方1人に追い抜かれる(山行中に出会ったのはこの3人だけだった)。

無名峰に着いたのが10:30頃。稜線には強烈な風が吹き荒れている。ガスに阻まれ、これから登ろうとしている阿弥陀南稜は全然見えない。先ほどぼくを追い抜いた単独の方はここでザックを降ろし、進むかどうか迷っている様子。ぼくも迷う。ザックを置き、稜線を偵察する。風は強いが飛ばされる程ではない。どうしよう。ごうごう吹く風と暗い空には恐怖を感じる。単独だし、無理せず引き返すか。しかしながら、行けない理由は見つからない。体力はまだまだ残っている。頭は冴えてやる気もある。ビバークできる装備もある。山頂までのルートは既に知っている。技術的に問題となる場所もないだろう。今必要なのは、引き返す勇気よりも、前に進む勇気だ。行こう。

無名峰から見る阿弥陀南稜方面

アイゼンを装着し、ザックに付けていた2本のアックスのうち1本を持つ。アウターのフードを深く被り、P3を目指して稜線を歩く。左からの風が強い。所々雪庇が1~2m程張り出している。数日前と思われる薄いトレースを辿る。P1とP2のコルには平坦地があり、ほとんど無風で、幕営には最適みたいだ。P3基部まで強風をやり過ごしながら進む。一番風が強いと感じたのは、進むかどうかを迷った無名峰の辺りだった気がする。

P3のルンゼにトラバースする前の岩陰でザックを降ろし、もう1本のアックスを出し、念のためヘルメットを被る。少し緩んでいた靴紐を締め直し、再び歩き出す。ルンゼの取り付きがルート全体の核心だろうと思っていたが、吹き溜った雪でかさ上げされており、トレースもしっかり残っていたので、どうということはなかった。上部は少し急傾斜なので、アックスをダガーポジションで雪面に刺して慎重に登る。ルンゼを抜け、稜線に出た。一安心。

P3ルンゼ

稜線では相変わらず左(西側)からの強風に襲われる。モンベルのアルパインサーマシェルジャケットのフードはヘルメットを被った状態だと小さすぎ、横風を防ぎきれない。顔の左側が凍りつく。眼鏡もまつ毛も凍って視界不良。歩きやすそうな所を探しながら30分程登っていると、いつの間にか阿弥陀岳山頂に到着した。展望なし。誰もいない。写真を数枚撮り、早々に下山開始。

阿弥陀岳山頂

中央稜を降りたかったが、視界が悪いと迷いそうなので、御小屋尾根を降りる。薄いトレースを辿り、順調に標高を下げる。樹林帯に入るともう風に脅かされることはない。日差しも出てきた。天気が悪かったのは稜線付近だけだったようだ。

船山十字路へ下るつもりで、その標識も見つけ、その方角へ曲がったはずだったのだが、なぜか美濃戸口に下山してしまった。地図を見ずに標識やテープ当てにしてしまった結果だ。入山時と同じようなミス。ちょっと自分が嫌になった。反省。

御小屋尾根の下り

美濃戸口の八ヶ岳山荘でタクシーを呼んでもらい、待っている間、単独の阿弥陀南稜を振り返る。天気には恵まれず展望はなかったけれど、寒さと強風と視界不良の中で自分がどんな気持ちになるかが分かり、条件が良くない中登れたのはかえって良かった。ルートファインディングのミスは、このところ読図が必要な山歩きをしていないせいだなあ。

ともあれ無事に帰ってこれて、山荘のコーヒー(400円で飲み放題)を美味しく頂くことができる幸せに安堵する。そうだ、帰りにいつもの石窯のパン屋に寄って、くるみレーズンパンをお土産に買おう。

八ヶ岳山荘にて

備忘録

  • アウターのフードが顔をきちんと覆えないと非常に辛い。左の頬と鼻の左側が軽い凍傷になってしまった。
  • 八ヶ岳の雪はさらさらしており、トレースが崩れやすい。吹き溜まりにハマると抜け出すのが大変。下りのラッセルは楽。
  • 現在地の把握を怠ると道に迷う。里近くになると変な赤テープと木の札がたくさんあり、惑わされる。
  • 美濃戸口から船山十字路までのタクシー料金は2,300円程。