瑞牆山 ベルジュエール他 (2018-07-14~16)

最終更新日

メンバー:S間(L、記)、kinaco、K寺

概要

瑞牆山山頂から北西に延びる尾根に位置する末端壁、そのなかでも、とりわけ大きく要塞のようにそびえる十一面岩正面壁の岩頭に辿り着くための最も容易なラインが「ベルジュエール 10p, 5.11b」である。1p目はフェイスとスラブのボルトルートで5.11台、以降は5.10台前半までのクラックを繋ぐルートだ。

僕は過去2回、このルートを目指したものの、1回目は気持ちが負けて、2回目は体調不良で、それぞれ5p目と4p目までで途中敗退している。2回連続で敗退というのは個人的に経験がなかったので、ベルジュエールは「登りたいルートリスト」の上位にランキングされたままだった。今回、3回目の挑戦にして、(途中A0やテンションしたもののとりあえずは)岩頭まで抜けることができた。

  • 2018-07-13(金) 23:00 武庫之荘(集合) →
  • 2018-07-14(土) [晴れ] → 5:00/9:00 みずがき山自然公園 → 10:00/12:30 リアス式エリア(ジャイアント・ジャム・サンド 5.10a、海豹 5.9) → 13:30 みずがき山自然公園
  • 2018-07-15(日) [晴れ] 5:45 みずがき山自然公園 6:45/7:30 ベルジュエール取付 → 10:30/10:50 シロクマのコル → 12:30 8p目取付 → 15:30 ベルジュエール終了点 16:20/16:40 ベルジュエール取付 → 17:30 みずがき山自然公園
  • 2018-07-16(月) [晴れ] 7:30 みずがき山自然公園 → 8:00/13:30 不動沢(寒々ルート 3p, 5.7、よろめきクラック 5.10a) → 14:00/14:30 みずがき山自然公園 → 21:30 武庫之荘(解散)

詳細(ベルジュエール 10p, 5.11b)

2018-07-15 5:45、kinacoさんと娘に見送られ、K寺さんと二人でみずがき山自然公園キャンプ場を出発する。急なアプローチをこなして6:45に取付に着くと、既に先行パーティーがベルジュエールを登る準備をしている。山河微笑にも数パーティーが取付ている。みんな朝が早い。

▲キャンプ場から十一面岩

1p目(5.11b、S間リード):3度目のトライにしてはじめて1p目をリード。これまでは荷物満載でのフォローだったから登れなかったのだと思っていたけれど、空身で登ってもやっぱり登れない。2本目のボルト(ハング下のボルト)までがとても遠く感じ、どうしようかともがく。何度かテンションして、微妙なステミングで凹角を恐る恐る這いあがり、ボルトにクリップ。その後はスピード優先でボルト毎にA0し、フリークライミングとはほど遠い登りとなる。最後のスラブフェイスも難しいがボルトが近いのでA0ならばなんとか登れる。先行パーティーがビレイ点に居るので最後のボルトでしばし待つ。彼らは2p目を左に進んでいるので、「達磨バム」へ進むらしい。

▲1p目の取付き

2p目(5.10a、K寺さんリード):少ハング下のスラブのトラバースからはじまる嫌らしいピッチ。K寺さん、粘ったものの、2ピン目付近で痛恨のテンション。左の凹角に回り込んでからも所々ロープが止まるので苦労している模様。フォローしてみると岩がシケシケしており、なかなか登りにくい。

▲1p目上部のスラブフェイス

3p目(5.7、S間リード):ガバフレークをたどって乗っ越した所がトポ上の終了点だが、4p目のクラック基部までロープを伸ばす。後半は泥の詰まった浅いコーナークラックでアルパイン的。

▲2p目のトラバースから凹角

4p目(5.9、K寺さんリード):ワイドハンドからシンハンドのスッキリしたクラック。K寺さんは快適そうにOS。気持ちのいいピッチ。

▲4p目のスパっとしたクラック

4p目を抜けるとシロクマのコル。これから向かう大フレークとチムニーを眺めながら小休止。行動食と水分を補給する。ここで10:30なので、午前中にはチムニーを抜けられそうだ。

▲シロクマのコルから5p目(右下のフレーク)と6p目(左上のチムニー)

5p目(5.10a、K寺さんリード):ハイライトの大フレークは希望によりK寺さんのリード。基部のクラックにカムでビレイ支点を設置。K寺さんは大きめのカムをぶら下げて離陸。フレークのかなり奥にキャメロット2番を効かせている。その手があったか。中間部の足場がある所でキャメロット4番を決めてから、高度感のあるレイバックで2手程上がり、フレーク上のガバを掴んでキャメロット5番をセット。その後はフレークに馬乗りになり終了点へ。見事オンサイト!

▲5p目取付のビレイ支点。カム3つで固定分散
▲5p目の大フレークをOSするK寺さん

6p(5.8、S間リード):プロテクションがリングボルト1本で絶対に落ちられないと名高い恐怖のチムニー。いよいよリードする時が来てしまった。リングボルトの場所まではバックアンドフットですんなり行けた。ここから上、向かって右側の壁がビショビショに濡れている。そして上に行くにつれ、バックアンドフットには狭いサイズとなる。膝を前に、カカトを後ろに当て、ズリズリ這い上がるものの、プロテクションが取れなくてとても怖い。濡れてるし。一旦クライムダウンしてリングボルトにテンション。どうせ使えないやと持ってこなかったキャメロット5番をロープに括ってもらい引き上げる。再びトライ。頼みのキャメロット5番は全然スカスカだ。諦めが付いたので、膝とカカト、両腕を突っ張り、ズリズリと少しずつ高度を稼ぐ。抜け口のチョックストーンにキャメロット0.75番をセットし、必死のマントリングをこなし、狭くてジメジメした狭間から抜け出る。灌木でビレイ。フォローのK寺さんのゼーゼーと荒い呼吸が遠くから聞こえると、ロープにテンションがかかった。リードよりも、荷物が重いフォローの方が辛いのかもしれない。

▲6p目のチムニーを見上げた所

7p目(歩き):ブッシュを少し歩いてチムニーの手前まで。

8p目(5.10b、S間リード):僕の希望でリードさせて貰う。出だしは(またもや)チムニー。その後、フィンガークラックの決まるスラブをこなすと、核心の逆イの字クラックだ。垂直部分のフレークをレイバック気味に登る。あとは左上すれば突破できるだろう。しかし、抜け口でプロテクションを決めたくなり、まごまごとセットしているうちにパンプしテンションしてしまう。少し休んでトライするとムーブはこなせたので、突っ込んでいたらOS出来たかもしれないと後悔するが、まあ突っ込めなかったのでそれが実力だ。開放感のある稜線でビレイ。

▲8p目の逆イの字クラック
▲8p目ビレイ点。今回もクアッドアンカーが活躍しました

9p目(III級、K寺さんリード):岩稜帯を抜けてバンドまで。

▲岩頭へ続く岩。あれを登れば終わり

10p目(5.8、S間リード):出だしがやや被っており、フィンガージャムを決めて乗っ越す感じ。けっこう難しくて落ちそうになりつつも、なんとか突破。最後の岩頭に終了点があるか不明だったので岩頭下の水平クラックでピッチを切ってしまう。が、下降支点がどこかにあるはずだが探してもあたりに見当たらない。最後の岩頭の上に残置スリングがチラリと見えたので、仕切り直して登る。微妙なスラブにハンガーが飛んだボルトが1本。スリングをタイオフしマントリングすると、開放感のある岩頭に着く。ここが本当に頂上だ。感無量。

▲最終ピッチの出だし。5.8なのにけっこう被ってます
▲ベルジュエール終了点
▲終了点から瑞牆山本峰
▲終了点からキャンプ場と八ガ岳

下降は頂上バンドまで15m程の懸垂。そこからは歩きでルンゼまで。ルンゼをフィックスロープで数回懸垂して、踏み跡を辿って取付きに戻る。エネルギーと水分を補給して、キャンプ場まで下る。まだ日のあるうちに下山。きなこさんと娘に迎えられ、ビールで喉を潤す。素晴らしい瞬間。

ようやく、3度目のトライにしてベルジュエールをトップアウトすることができた。そう、トップアウト。まだまだフリークライミングでの完登にはほど遠い。近い内にまた訪れたい。

ギア

  • シングルロープ 60m×1
  • マスターカム 1〜4×1セット
  • キャメロット 0.75〜5×1セット
  • キャメロット 0.75〜2と4をもう1つずつ
  • クイックドロー×12
  • 小さなザックに水(二人で800m)と行動食を少々。
  • 実際使用したカムはマスターカム1〜キャメロット5の1セット(キャメロット1は2つ)。クイックドローは8セット。次回はもう少し減らせそう。
▲持っていったギア一式

備忘録

  • 軽量化のため、アプローチシューズと携帯電話は取付にデポした。下山時はクライミングシューズをかかと履きすると、つま先の痛みが多少は和らいだ。
  • コールする代わりに全ての合図を笛で行った。ビレイ解除(トップ)、解除しました(セカンド)、ロープ一杯(セカンド)、登って良し(トップ)、登ります(セカンド)、の各タイミングで笛を吹いた。声を張り上げたり、耳を澄ましたりする必要が無くて楽だった。