雪彦山 ニッチモ、サッチモ (2019-06-01)

最終更新日

▲ニッチモ(3p 5.10c)がある不行岳

雪彦山のニッチモ(4p 5.10d)とサッチモ(3p 5.10c)というマルチピッチクライミングルートを登った。パートナーはいつものT尾さん。

関西において、マルチピッチを存分に味わえる岩場というのは少なくて、三重県の御在所岳、徳島県の小豆島拇岳、そして兵庫県の雪彦山がメジャーどころだ。小豆島は海を渡らなければならないハードルがあるので、自然、御在所岳と雪彦山に人気が集中する。そんな雪彦山にありながら、ニッチモとサッチモが登られることは多くない。理由は、(一般的な山岳会系クライマーにとっては)比較的グレードが高く、カムによるプロテクションセットが必要、という技術的困難さがあるからだ。

登ってみると、とても面白いルートだし、ボルトが少ないことにより、自分で登れそうなラインを探すというルートファインディングが必要とされ、それもまた楽しさを引き立てている。打たれたボルトは少ないものの、打ってあるボルトはとてもしっかりと施工されている。グレード感も辛くない。それでもこの2ルートを登るためには、確実なプロテクションセット、5.10台後半を落ちずにリードできるクライミング能力が、パーティー全員に要求される。特にニッチモ1p目の前半は見た目よりも傾斜がある上、トラバース気味だしボルトも少ないので、A0で突破するというのがなかなか難しくて、リードはもちろんフォローもフリークライミングで突破できる能力が必要となる。

さて、2016年4月に僕は1度この2ルートを登ったことがあり、そのときは奇数ピッチをリードして全ピッチ完登した。今回はT尾さんが奇数ピッチをリードしてくれることになり、僕は偶数ピッチをリードした。リードは空身で、フォローが水、食料、アプローチシューズを背負って登った。

最も辛かったのがニッチモ1p目5.10dで、荷物を背負ってフォローするのは、かなりしんどかった。途中で諦めようかと思ったほどだ。思えば、前回来たときは、出だしの強傾斜(5m程)部分だけ荷揚げしたのだった。まあ行けるかな、と思って今回は荷揚げせず素朴に登ったのだけれど、たった数kgのサブザックがずしりと肩にのしかかり、ボルトにテンションかけつつの情けない登りとなってしまった。

最も面白かったのはサッチモ2p目5.10c。このピッチがサッチモのハイライトで、今回どうしてもリードしておきたかった。核心は小ハングを越える部分。スタート地点からハング上のボルトまで、6mくらいある。そのままではランナウトしてしまうので、溝状のクラックにカムを決めつつ登るのだ。オフセットマスターカム黄/橙をセットしたは良いが、溝の深さが十分にないので、しっかり効いている気がせず、かといって効いてなくもない。もう一段上にリンクカム緑を無理やりセットしたもののやっぱり微妙な決まり具合で、ドキドキしながら小ハングに向かって飛び出し、ハング上のボルトにクリップして一安心、という過程がとても面白かった。

そんなわけで、全体を通して充実のクライミングができた。ニッチモとサッチモを継続すると計7ピッチ。パワー系とスラブ系の登攀力、ルートファインディング力、プロテクション技術が求められ、最終的に大天井岳の山頂に到達できる。僕としては、雪彦山でNo.1のルートではないかと思う。