小田原川 掛ヶ谷(2022-06-25)

最終更新日

メンバー

崎間(単独)

行程

  • 2022-06-25(土)曇ときどき晴
    10:50 林道終点
    11:00 掛ヶ谷入渓
    11:25 一の滝
    11:50 二の滝
    12:20 三の滝
    13:05 貯水池
    13:30/13:40 高場山
    13:55 貯水池
    14:45 林道終点

詳細

暑くなってきたので沢の涼しさが恋しくなった崎間は、シーズン初の沢登りへ向かうことにした。例によって単独だし、久々の沢なので、行ったことがある小田原川 本谷をリピートしようかと改めて調べていたら、近くに掛ヶ谷というのがあるらしい。こちらも初級の様なので、どうせならと新しい場所に決めた。

彼は習い事に行く妻子を車で送り、そのまま播但道を走り、神崎南ICで降りて11時前に現場に到着した。自宅からは1時間程だ。墓地の手前にあるスペースに駐車し、沢の装備を整えて出発した。アスファルトで舗装された林道を少し登ると、立ち木に付けられたピンクのテープが目に入り、導かれるように沢に降りて入渓した。これまでに登った播州の沢にはどこか奥底に白っぽい濁りがあったけれど、この沢の水は透明度が高く、この辺りでは最も上等な水質なのではと思った。

▲入渓

彼はいつも、沢を登ることに対してある一定の恐怖感を抱いている。本能的に水が怖いのだ。それでも沢登りを魅力的だと思うのは、第1に沢登りが登山の原点として古来から行われていたことに敬意を感じること、第2に整備された登山道やクライミングルートにはない冒険性を感じること、という理由である。

崎間はこれまでフェルト底の沢靴を愛用してきたが、年に数回の使用とはいえ、5年以上使っているとさすがにヘタっており、今回は新しくラバー底の靴を使ってみた。岩の上では、滑ってしまう感じがして、緊張しながら慎重に歩みを進めた。

一の滝はゴルジュ状の奥にあった。右岸は大きな岩壁で、オーバーハングしている。奥のチョックストーンからは水が吹き出している。沢のエキスパートなら水線を突破するのかもと思いながら、左岸を巻いて落口に出た。ここで小休止し、おにぎりを食べながらテルモスのお湯を飲んだ。沢から離れて斜面を登った後だったので、背中にじっとりと汗をかいていたが、それでも彼は冷たいものよりは、湯気の立つ温かいお湯を飲むことを好んだ。それは習慣の問題なのだ。

▲一の滝

凡庸な沢の中をしばらくばしゃばしゃと進み、狭まった渓谷を右に回り込んだ所に大きな滝を見た。これが二の滝であろう。辺りは滝身から放たれた細かな飛沫で充満している。ちょうど陽光が射し、滝がキラキラと光る。たとえ小ぶりの滝であっても、ドドド…という音は近づく人を威圧する。臆病な崎間は軽い恐怖感を覚える。少し前まで家族と一緒にいたし、舗装された道を車で走っていた。だが今は、携帯電話の電波も通じない谷筋に1人身を置き、落差20m程の滝の前で放心している。まるで異世界に迷い込んだみたいだ。

▲二の滝

二の滝をどう巻こうか少し思案し、やや悪い左岸の急斜面に取り付いた。つかもうとした岩の先に視線を感じて見上げると、深淵から覗き返す何者かの様に、蛇がこちらを見ていた。登山者はいつも招かれざる客だ。ひっこんでくれた蛇に感謝しつつ、ぬかるむ急斜面を我慢して登り切った。登山道を少し歩いて再び沢に戻ると、辺りは穏やかな滑床になっていた。静かな時間にコトコトと透明な水が流れる。人が山や谷に入ろうが入るまいが、険しさも穏やかさもそのままに、この場所はずっとここにある。揺るぎない事実に対し、1人の人間の意思などはあまりに無力だ、そんなことを考えながら、彼は三の滝へと進んで行った。

▲滑床
▲三の滝
▲錦鯉のいる貯水池
▲高場山へ続く道

備忘録

  • 入山から下山まで誰とも合わなかったし、車もなかったので、この日の入山者は僕だけだったようだ。山を、とりわけ沢を1人で過ごせたことが、怖かったけれど楽しかった。
  • 下山は沢沿いの登山道を使った。ところどころ崩壊し、倒木が行く手をはばみ、踏み跡が無くなっていた。特に溜池~三の滝の間は迷いやすい印象。
  • ヒル被害なし。ただし、下山して沢スパッツを外すと、沢靴や靴下に沢山くっついていた。靴下を履いていて良かった。