テレビ台の自作に学ぶDIYの本質

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作りたいなと思って長らく放置していたテレビ台をやっと作りました。家族からの評判も上々です。取り掛かればその日のうちに完成したので、もっと早くにやればよかったのですが、いろいろとめんどうで先延ばしになっていました。出来上がってしまえば、作ってよかったなと思えます。

この手の台や棚は、大きくはありますが作るのは簡単ですし、市販品を買うとなるとなかなか理想のサイズがない上に高価でもあるので、DIY(Do It Yourself、日曜大工)する価値が高いです。

家具的なDIYをするようになって4年くらい経ち、多少は慣れてきました。テレビ台の自作を例に、一連の流れをまとめ、さらにその中からDIYの本質のようなものの抽出を試みます。

▲自作したテレビ台(と犬)


製作手順

(1) 設計

どこにどのようなものを作るのかイメージを膨らませて、寸法に落とし込みむ工程が設計です。特定の場所と目的に特化した物を作れることがDIYの醍醐味です。これまでは、テレビを床(レンガみたいな所)に直置きしており、子どもが見づらそうにしていたので、高さを出すのが主な目的です。

汎用性など考えない専用設計にした方が、使いやすくなる気がします。用途に合わなくなったら、バラして別の物に組み替えれば良いのです。今持っているテレビと設置場所のサイズに合わせて、台の奥行、高さ、幅の寸法を決めました。

▲設計図

(2) 材料調達

材料を買い揃える「材料調達」工程、これが最も手間です。僕は「杉無垢ボード(1820x910x24mm)」を使うことが多いです。ヒノキ材やパイン材よりも安価で、柔らかいので加工がしやすいです。厚さが24mmあるので机の天板にもできるくらい丈夫ですし、何より杉の材質が好きです。コーナンPRO等で手に入ります。

ホームセンターで木材を購入した場合、大抵はその場で切断してくれるサービスがあります。大きいサイズの切断を自力で行うのは大変なので、このサービスはとてもありがたいです。先ほど設計した寸法を簡単な板取図にしてメモ用紙に書いておき、店員さんに渡します。1カット10円程です。今回は5カットだったので、切断料金は50円でした(安い!)。

▲板取図(テレビ台に使ったのは上の2列分のみ)

一般的に、ボード類は長さ方向が約1800mm、幅方向が約900mmほどです。設計のときに、1枚もしくはn枚(nは整数)のボード類をほぼ使い切るような寸法にしておけば、無駄がありません(余ったら余ったで、他の用途に使えば無駄にはならないのですけれど)。

加工の精度は店員さんの技量や設備にもよりますが、例えば320mmと指定しておけば、ほぼジャストか、狂ったとしても319〜321mmの範囲にはなるようです(±1mm)。

設計した寸法に切断された材料が手元にそろえば、6割完成です。

(3) 表面のやすり掛け

表面の仕上げ状態はDIY家具の出来栄えに大きく影響します。ざっとでも表面をやすりがけしておくと品質が上がりますし、愛着も湧きます。人力では非常に大変で、時間もかかってしまうので、電動工具が活躍します。僕はマキタの仕上げサンダーを使っています。

▲サンダーでやすり掛け

サンダーに使う紙やすりは、(マキタ専用のものではなく)大判サイズのものを長手方向に3分割したものを使っています。今回使用した杉無垢ボードのように、あらかじめ表面がそこそこ仕上げられた材料なら、#240でざっと磨いてから、さらに#400でざっと磨くと、良い感じになります。

(4) 組み立て

組み立ては、平面の素材が立体になる最も楽しい工程です。複雑な加工はせず、平面と平面をドンとくっつける方法(「いもすけ」と言うようです)で組み立てています。固定はビスのみです。強度を出すには木工用ボンドを併用するのが良いのでしょうけれど、ビスのみでも強度的に困ることは今のところありませんし、分解もしやすいためです。

ビスで止め位置がずれてしまうと全体の形状に影響してしまいますので、慎重に仮組して微調整します。ビスの位置は、差し金を使って下書きして一直線上になるようにして、均等に割り付けます。今回は320mm幅に3本(端部から15mm、中央、反対の端部から15mmの各位置)をビス止めしました。

ビスは、固定する板厚の倍以上の長さを使用するのが一般的なようです。テレビ台に使用している板厚は24mmなので、その倍である48mm以上ということで57mmのビスを使いました。ビスにはいろいろな種類がありますが、最近はクロメートメッキでコーティングされたものを使うことが多いです。

▲ビス(足割れコーススレッド 3.8x57mm)

ビス止めの前に、キリで下穴をあけます。この下穴いかんでビス止め位置が決まってしまうので、慎重にかつ思い切り良く、下穴を開けます。ビスの頭をさらう用に、2段階になったキリがあるときれいに仕上がります。ない場合は、プラスビットをぐりぐりと押し付けることでも、ビスの頭をさらうザグリができます。ここまでの準備ができたら、インパクトドライバでしっかりと固定します。

(5) 表面仕上げ

上手く組みあがったら、最後に木材の表面を仕上げます。杉無垢ボードの場合は蜜ロウを塗るだけでいい感じになりますし、ほのかな杉の香りに癒されます。サンダーで磨いた細かい木の粉が表面に残っているので、蜜蝋を塗る前に、水で濡らした手ぬぐいで全体的に拭いてから、蜜蝋をたっぷりと塗りたくります。塗った直後はべたべたしていますが、1日も経てばサラサラとして心地良い手触りになります。

▲蜜ロウを塗りたくります

DIYの本質について

以上、テレビ台のDIYを例に、設計、調達、製作の流れをまとめました。これらを抽象化すると、

  • どうすれば課題と思っていることを解決できるか(現状をより良くできるか)考え
  • どの材料をどう加工するかを設計し
  • 材料を調達して加工して形にする

のような感じかと思います。

すなわち、「あったら便利だろうな」とか「ここが不便なんだけど」といった課題を見つけて解決するという行為、さらには、構想から実体化までの全工程を自分の手を動かして行うことがDIYの本質であるのだと僕は思います。

完成品を手に入れることのみが目的であれば、既製品を探して購入したり、専門の業者に依頼したりする方がてっとり早いでしょう。では、なぜ僕たちはDIYしてしまうのか、どんな魅力があるのか、その答えの一つは、圧倒的な経験値です。

例えば読書をするにしても、①文章を目で拾ってざっと読むのと、②文字をノートに書き写しながら手を動かして読むのと、③文章を声に出して読んで内容を理解するのと、④内容を解釈して誰かに教える、のとではそれぞれに理解度に差があり、後者になる程、より深く理解できます。

同様に、自分の身の回りの物を自分で作るプロセスには、物の成り立ちを理解する大きな助けになります。木材を切断するだけでも多種多様な工具が存在し、接合方法にも多くの種類があります。専用の切断機でホームセンターで加工してもらった方が絶対に楽だ、という考えは、自力で切断した経験があるからこそ分かるものです。

DIYの経験を積み上げていくと「これは前からこうやってるけど、別にその方法でなくてこうした方がいいのでは」とか「既存の方法では実現できないことも、自分でつなぎのピースを組み上げれば、実現できるようになるのでは」といった発想の幅が拡がるように思えます。100円ショップで手に入るようなものをわざわざ自分で手を動かして作ることで得られる経験が、思考の幅を拡げる糧になることもあります。

なにより、自分で物をつくることは、単純に楽しいですしね。