GPS端末の性能テスト
宇無ノ川から奥駆道のラウンド縦走では谷筋と林道とで道に迷ってしまい、もしものときのために、GPS端末をきちんと使えることが重要だと身をもって感じた。当日はスマホ(XPERIA Z5)のGPS測位性能がいまいちだったこともあり、雪山での使用も見越してGPS専用端末(GARMIN eTrex30x)を購入した。使用方法の確認も兼ねて、スマホを含めた計3台のGPS対応端末を性能テストしてみた。
テストエリア
鳥取県は扇ノ山(おうぎのせん)の南にある来見野川(くるみのかわ)での沢登り時にテストした。
GPS端末
テストした端末は以下3台。
- GARMIN eTrex30x (英語版)
- SONY XPERIA Z5
- Apple iPhone 5
eTrex 30xは日本語版と英語版が市販されているのだけれど、日本語版は英語版よりも2倍以上の販売価格なので、英語版をAmazonで購入した。メニュー等は英語のまま使用し、地形図はすけログ氏が配布されている統合地図(DEM10)の文字コードASCIIを使用した。文字コードがUTF8やShift-JISであれば地名等が日本語表示されるようだけれど、日本語の設定と地図データの読み込みがいささか煩雑になるようなので、日本語化せずに使用することにした。地名等はローマ時で表示される。
スマートフォン2台(XPERIA Z5とiPhone 5)にはジオグラフィカをインストールし、あらかじめテストエリアの地形図を表示させ、キャッシュとして保存しておいた。なお、XPERIA Z5はメインに使用しているスマホであり、楽天モバイル回線による通信可能な状態。iPhone 5は妻のお下がりでSIMなしのため、WiFi通信のみ可能な状態。
テスト方法
来見野川の沢登り時、行動開始(車を降りた時点)から、3台の端末それぞれでトラッキングを開始し、行動終了時(沢を登って下山し車に戻った時点)にトラッキングを終了した。条件を揃えるため、スマホ2台はいずれも機内モードとした。
結果と考察
(1) 行動時間
5時間32分
(2) バッテリー消費量
100%の状態でスタートし、帰着時点でのバッテリー残量は以下のようになった。
- eTrex 30x:90%くらい(詳細不明)
- XPERIA Z5:84%
- iPhone 5:49%
iPhone 5はバッテリーがヘタっているようで、5時間半の行動で半減した。日帰でも行動時間が長いと途中で電池が切れてしまいそうだ。XPERIA Z5は思いのほか優秀だった。GPSを常時ONにしていたものの、行動中は全く画面表示しなかったことも影響していると思う。
現実的には、通信手段としての機能をXPERIA Z5は温存して、GPS機能はeTrex 30xが受け持つ、というスタイルが安心できる。eTrex 30xはバッテリー消費量を示すアイコンが終始満タン表示だったので、正確な消費量は不明だけれど、まだまだ持ちそうだ。
(3) トラックログの精度
それぞれの端末に保存されたトラックログをカシミール3D上で表示した結果が下図。見づらいけれど、赤がeTrex 30x、緑がXPERIA Z5、黄色がiPhone 5。
3機種とも、全体的なルートは取得できている。eTrex 30xのログは、測定間隔が細かく、立ち止まって休憩した箇所や、高巻き時の詳細も見て取れる。XPERIA Z5は直線的というか、測定間隔が粗いので、ちょっと心もとない。iPhone 5はXPERIA Z5とeTrex 30xの中間くらい。
10m滝を高きした部分(下図の中央やや上で水線から右側に迂回している部分)を拡大してみる。eTrex 30xは「自動」に設定して約10秒間隔でログが保存されており、高巻き部分もそれと分かる。XPERIA Z5は間隔が約120秒と粗く、高巻きの情報は残されていない。iPhone 5では、水線から離れている様子はかろうじて分かる。
XPERIA Z5もiPhone 5もアプリにジオグラフィカを使用しており、トラックログ間隔の設定はどちらも「標準」にしているのだけれど、取得されたログ間隔に差があるので、Android版とiOS版とで違いがあるのかも知れない。バッテリー消費量にも影響していそうだ。
いずれにしろ、専用端末であるeTrex 30xのログ精度は、2台のスマホに比べて一歩抜きん出ていることが分かり安心した。
それにしても、今までの山行でXPERIA Z5がGPS信号をロストしまくっていたのはなぜだろう。この山域が、たまたまGPS信号を捉えやすかったのか、使い方が悪かったのか。これまでは、XPERIA Z5のバッテリー節約のため、トラックログは取得せず、必要な時だけジオグラフィカを起動して現在地を確認する、という使い方をしていたのだけれど、そのせいでGPS信号の捕捉に時間がかかっていたのかもしれない。
今回のテスト結果からすると、トラックログの記録中は、スマホでもGPS信号を捕捉し続けてくれるようだ。逆に言えば、いざというときの保険としてGPSを使いたいのであれば、山行中はトラックログを記録させて、GPSをロストしないようにするのが安心だ。
(4) 操作性
これはもう、スマホに比べれば圧倒的にeTrex 30xが操作しやすい。本体に厚みがあって手の平にすっぽり収まり、材質も滑りにくいので、ホールドしやすい。タッチパネルではなくボタンで操作できるので手袋したまま扱えるし、直射日光下でも画面の表示が良く見える。
電源さえ入れれば自動的にトラックログが保存されるというのも、操作ミスを防ぐありがたい設計だ(スマホでは、GPSアプリを起動し、トラックを保存する、という操作を行う必要がある)。
eTrex 30xの寒冷地テストはまだできないけれど、GPSに特化した製品であり、すべての操作はボタンで行うので、山で使用するにはこちらに分がある。
結論
- 通信用スマホとは別にGPS端末(eTrex 30x)を持つのが安心